頭蓋骨から恥骨へ向けて

写真を撮ったこと、考えたことの記録

こんなに遠くにきてしまって

初めて物心がついたのはおそらく2歳くらいのときだった。
昼寝から目が覚めて、ああ、目が覚めたのだなあ、と僕は思った。
覚醒後の曖昧な状態が記憶に残っていることは多い。



5歳くらいのときだっただろうか。
父や母に子供の頃の記憶を訪ねたけれど、父も母もほとんど覚えていなかった。
僕は、そのとき、今日あった出来事や友人たちのことを忘れないでおこうと強く思った。
ずっと、忘れないでおこう、と強く思ったことだけを思い出す。何度も。
あの友達の名前はなんだったんだろう。


新しい命に触れると何だかプレッシャーを感じる気がして。
と、妻の実家の帰り道、車中で妻がそんなことを言った。
全くその通りで僕たちはどんどん新しい命に追いやられてしまう、きっと。
多分、妻が言いたかったのは、そんなことではなかったのだろう。
寝て起きて、忘れて、そうとても多くのことを忘れてしまって。


だけど、身体は大きくなったし、パスタも作れる。
運転だってずいぶんうまくなったじゃないか。
我々の実家は遠くて、少し大変だけど、もう二人で往復500kmなら超えられる。